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風化風葬-最終話-


傷ついた方が成長出来る。もっと高みを目指したい

成長なんかしなくてもいい。心が平穏であれば




さぁ、どっちを選ぶ?



何が成長?何が平穏?


「100年後は目の前の人達全員がいなくなってるんだよ。私も、フェイトちゃんも」

なのはが呟いた

目の前には干されたたくさんの白いシーツが、風になびいて波のように見えた

「そうだね」

そう返事をしたけど、なんだかそれがとても不思議なことのように感じた

「なのに、どうして・・・・」

なのはの声は震えていた
私はなのはが何を言いたいのか分かる気がした


でも


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風化風葬-最終話-

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私の退院の日が決まった。本当は今すぐにでも退院が出来るのだけど
無茶をしてはいけないからまだいなさいと、母さんに言われた
又、家を抜け出すのではと心配しているようで
それに対しては勿論何も言えなかった

背中の傷は少しだけど跡が残るそうだ
でも別に気にはならなかった。他の人に残らなくてよかったと思う

ベットの上で上半身を起こし、じっと掌を見る

私は『ちゃんと』守れただろうか?


命をかけて


「フェイトちゃん」

いつの間にかなのはが横に立っていた

「なのは、今日はお休み?一人で来たの?」
「うん」

なのはが一人で来てくれたのは初めてだった
大抵はヴィヴィオと、たまにはやてやアリサやすずか達と

そしてなのははいつもと変わりないように見えた
少なくてもあの雨の日の時のような激情は見せない

いつもの笑顔、いつもの優しさ

それがなのはの強さ

でも、今日は違う

「フェイトちゃん。ちょっと、背中見せてくれる?」

そう言うとなのははベットを囲うカーテンを引いた

「なのは・・・」

見て欲しく無かった

自分の弱さの象徴になってしまった醜い傷を、
なのはには見て欲しく無い

「後ろ、向いて」

なのはは私の肩に手をかけ軽く力を入れる
少しだけ抵抗してみる

「フェイトちゃん。駄目だよ。ちゃんと見せてくれないと」

その声音には有無を言わせぬものがあった
私は体の力を抜き、その力にあがなうのを止めた

するりと布が体から滑り落ちて、空気を直に体に感じる
それから背中をなぞる指先の感触

ゾクリ。とした

「羽根」
「え?」
「羽根、みたい」

それが傷の形を指しているのだと気づく

「まさか、そんなに綺麗なものじゃないよ」

私は苦笑う

それからふわりとしたなのはの髪と額が背中につけられる

「なの、は?」

なのはの両手が私の体に回されているから後ろを振り向くことが出来ない

だけど、泣いているのだけは分かった


もう一度、自分の掌を広げて見る

手は『心』に似ている


温かくなったり
冷たくなったり
触れられると嬉しくて
離れてしまうと寂しい


今の私の『心』は


なのはを抱き締めてやることすら出来ない


それが、とても悲しい私の『ココロ』


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私となのは並んで病院の屋上のベンチに座っている


でも


「でもね、なのは。私は自分が傷つくより、自分以外の誰かが
傷つくのが嫌なんだ。誰かが傷つく位なら自分が傷ついた方がいい。
誰かが痛いと思う位なら自分が痛い方がいい」

もう、誰かが悲しむ姿なんか見たく無いから

「皆が笑ってくれている方がいい。それが私の幸せなん」
「私は幸せじゃない!!!」

なのはが、叫んだ

「なのは?」

それから立ち上がって柵の方へと向かう

「なの・・・は?」

それから


「危ない!!」


ひらりと柵を飛び越えた


「私が」


なのはは笑った


「私がここから飛び降りたら、フェイトちゃんはどうする?」
「駄目だよ!なのは!」
「答えて!!!!」


考える深く深く。そして


私は笑う


「なのはは、なのははそんなことしない。だって、ヴィヴィオがいる
ううん。ヴィヴィオだけじゃない。皆いる。その人達を悲しませるような事しない」
「うん。そうだよ。だからね」

奇妙な光景だった

私達は笑っているのに

なんだか酷く


心臓の音がうるさかった



「だからこうするの」



ゆっくりとなのはが視界から消えていく


「フェイトちゃん」


君は

何を


してる



「愛してる」




の?




完全に消えた視界に広がるのは









君の


好きな






あぁ、そうか



ずっと、こんな気持ちだったの?



ゴメン



今、行くから



走り、柵を超える



太陽の光が眩しくて、目を瞑った


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「綺麗な花っすね」
「ありがとう。フェイトに似合うと思ってね」
「向日葵っすか」
「そう。ヒマワリ。ヒマワリって太陽に向かって顔を上げるじゃない?
いつでも上を向いてて。ね?フェイトにぴったりでしょ?」

「俺の見解は、向日葵はいつも太陽にあこがれている可哀相な存在って感じっすかね」
「それってどういう事?」
「いくら太陽に向かって顔を上げても、決して手が届くことは無い。
自分の頭上で光輝く太陽を、向日葵はいつも見ていることしか出来ない。
向日葵にとって太陽は、手の届かない遠い存在」

「それでも太陽はヒマワリに気付いてる」
「え?」
「いつも見てくれてるヒマワリに、太陽だって気付いてるよ」
「あぁ、そういう考えもありっすね。そっちの方がなんかいいっすね」

「少しづつ少しづつ。あたし達は削られて生きてんの。
心がすり減っちゃって、大事な事をポロポロと忘れちゃうんだよね」
「大事な事ってなんなんすかね。それすらうまく思い出せないっすよ」

「『それ』を持っている人に会うと思い出すんだよね。それは本当に稀にしか
起こらないことだけど。自分が無くしてしまって、もう手に入らないものを
持っている人に出会う時がある」
「そんな人間に、会ったこと無いっすね」
「ただ単に気づいていないだけかもしれないよ?もっと目を凝らして
ごらんよ。見る限りじゃあんたまだましな大人だからさっ」
「そうだといいんすけど。もしかしてお姉さんにとって彼女がその、
ごく稀に出会えた人だったんっすか?」
「そう。フェイトに会ってあたしは生き返ったの。生き返ったっていうか、
生きててもいいかなって思えたの。あぁそっか」
「なんすか?」


「フェイトはヒマワリってより」


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「フェイトちゃん。私が飛べる事忘れてたでしょ?」

私はその腕の中で嗚咽を上げた

抱かかえられたまま、ゆっくりと空へと舞い上がる

「残された人の気持ち、少しは分かってくれた?私達がどれだけ心配して
どれだけ心を痛めてたか分かってくれた?いつも無理をして、無茶をして
その度に傷を負って、ボロボロになって。それを見ている人達がなんとも
思ってないって。そんな風に思ってた?」

何処までも何処までも高く

「誰かの為に自分を犠牲にしないで。もっと自分を大切にして。
フェイトちゃんの事を愛してる人がたくさんいるんだから。」
それから・・・・」

痛い位に回された腕に力を込められる

「さっきみたいな馬鹿な真似は止めて」

嗚咽は一層酷くなるばかりで

「ゴメ・・・ンな・・・さい。でも・・・」
「ん?」

私の背中を、一つ優しく撫でるなのはの手は、やっぱり温かい

「私は、なのはが・・・・いないと」
「駄目だよ」

耳元で囁かれる声

「それ以上言っちゃ駄目」


なのはは分かっている

それを、口にしてしまったらきっと


私達は


「フェイトちゃん。このまま二人で、ミッドまで飛んで行っちゃおうか?」
「一緒なら何処まででもいいよ。なのは」


私達はまだ


「じゃあ、何処までも一緒に行こうね」
「うん」


色々なことが少し恐い



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「フェイトはヒマワリってより『太陽』なのかもしれない。
きっと見上げてる人がたくさんいるよ。本人は気づいてないかもしれないけどね」

「なんだか嬉しそうっすね」
「フェイト、早く戻って来ないかな」


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「約束だよ。フェイトちゃん」
「うん。約束」


手を伸ばしたら、太陽に手が届きそうだった





END


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