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EDENⅡ-12-



EDENⅡ-12-




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EDENⅡ-12-

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「なのはさん本当に、本当にそれでいいの?」

隣に座るリンディさんが不安そうに私を見ている

クロノくんはリンディさんの肩に手を置いた

「一刻も早くフェイトちゃんには元に戻って欲しいんです」
「でも!」

それでも納得がいかないようなリンディさんは

「体の傷はほぼ完治したから、自宅で療養でもいいのよ?ねぇ、先生」

目の前の医師に助けを求める。カルテを見て、それからレントゲンを見て
医師は頷いた

「だけどそれじゃあいつフェイトちゃんが元に戻るか分かりませんよね?」

それにも医師は頷く

「なにぶん、事例が事例ですし。精神的な構造の組み換えなどはここでは
分かりかねます。それはもっと特別な施設で特別な措置を施さなくては。
一体どんな事をするのか我々には検討もつきませんが。ここで出来ることは
これ以上ありません」

不安を煽るような言葉使いに眉を寄せる

「自宅に戻って時間をかけてじゃ駄目かしら?」
「母さん。一緒に暮らしているのはなのはなんだから、なのはの考えを優先しよう」

クロノくんが宥めるようにリンディさんに言った

頼みの綱だったスカリエッティからなんの情報も入手出来なかった以上
今は公的施設に頼らざるを得ない

「大丈夫です。フェイトちゃんはすぐに戻って来ますから」

何度も何度も周りの人達に言ってきた言葉
何度も何度も周りの人達から言われてきた言葉

今はそれにすがるしかない

そう。すぐ戻ってくるから。少しの間離れるだけだ

「先生。宜しくお願いします」
「分かりました。今日中に施設を調べて明日にでも準備しましょう」
「なのはさん・・・」

縋るようなリンディさんから視線を逸らし

思いを、馳せる


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部屋のドアをノックすると

「どうぞ」

返事が返された

「お邪魔します」

と言いながら入ると

「なのは、『お邪魔します』なんて言わなくていいのに」

苦笑いをしながらフェイトちゃんは開いたコンソールの上をタタンと叩いた
だってフェイトちゃんの部屋だからと私は笑う

「キャラメルミルク持って来たんだけど飲む?」
「ん、ありがとう。じゃあ少し休憩しようかな」

そう言うと一つ伸びをして、そのまま私に手を伸ばした
その手を軽く握る

「今日は帰って来てからバタバタしてたからゆっくりお話出来なかったね。
なのはは時間大丈夫?」

そう言って机の上の時計を覗き込む
もう結構遅い時間。ヴィヴィオは眠ってしまっている

「大丈夫だよ。私もフェイトちゃんとお話したいな。どうする?
リビングに移動しようか?」

フェイトちゃんは頷いて私の手を離して
椅子から立ち上がりさらりと机の上を片付ける

と、かしゃりと音がして写真立ての一つが机の上から転がった

「あ・・・っと」

私は拾い上げフェイトちゃんに手渡す

「ありがとう。なのは」

そして優しい眼差しでそれを眺める

写真立て。その中に写るのは

プレシアさんとアリシア

ずっとすっと小さな頃からそれはいつもフェイトちゃんの机の上に飾られている
私達三人の写真や海鳴市の家族の写真やエリオとキャロの写真と一緒に

でもその中でもプレシアさんとアリシアの写真は
長い航行に出る時には必ず持って行く

私達の写真は何枚もあるから艦の部屋や職場のデスクにそれぞれ
常時飾られているけど
この写真は一枚しか無いからと持ち歩いている

私は優しそうに眺めるその姿に胸が少し締め付けられる

思い出すのはあの、プレシアさんが酷い言葉をフェイトちゃんに投げつけた時のこと

フェイトちゃんのことを

いらないと言った
失敗作だと言った
役立たずだと言った

その所為でフェイトちゃんの心が壊れた
随分と長い間立ち直れなかった

当たり前の話だ

リンディさんやクロノくんやアルフさん
そして海鳴市で出来た友人達

その人達のお陰で少しずつ笑顔を見せてくれるようになって
私も凄く安心した

フェイトちゃんは強いから、過去なんかに縛られたりしない
あの辛かった出来事も段々薄れていって、前を向いて歩いて行くんだって
過去なんか振り返らないだって、そう思っていた

だけどフェイトちゃんは

過去を、酷い仕打ちをした母を

忘れずにいる
否、忘れようとしない

憎しみなんて微塵も持っていなくて、それどころか逆に

今でも時々、母を恋しがっているように見える
今でもちゃんと、母を愛している

「一度ね、これ。アルフに捨てられた事があるんだよ」

フェイトちゃんが思い出したように呟いた

「アルフは母さんのことがあんまり好きじゃなかったからね。
こんなもの持っててどうするんだって。忘れてしまえって。
でもそんなのは嫌だって言ったんだ。忘れたくなんてないんだ」
「ごめん。私も・・・アルフさんの意見に賛成・・・かな」
「そっか」

なんだか少し寂しそうに笑って、
フェイトちゃんは写真立てを机に戻してもう一度私の手を握り引く

「行こう。キャラメルミルクが冷めちゃうから」

私は黙って頷いて手を引かれるままフェイトちゃんの後について行く
リビングのソファに座るように促されて素直に座ると、
フェイトちゃんはキッチンの方へと歩いていく

戻って来るとその手にはフェイトちゃんとお揃いの私のカップ

「同じものでよかったよね」

お礼を言いながらそれを受け取る
それからフェイトちゃんは私の隣に座りコップに口を付ける

「ん。おいしい」

私も一口飲む

「うん。おいしいね」

フェイトちゃんは私を見てにこりと微笑んだ
穏やかで静かな時間

少しだけ体をフェイトちゃんに寄せる。フェイトちゃんは、ん?という顔をしてから
又微笑んでくれた

私は安心して、体の力を抜く

さらりと髪を梳かれ、その心地良さに目を閉じる
暫くそんな時間が続いた後

「あのね。なのは」

ポツリとフェイトちゃんが呟いた

「ん?」
「私ね。本当にごくたまにだけど思うんだけど」
「何を?」

目を開けて私より高い位置にある朱色の瞳を覗く

「もしも私が、ちゃんと『アリシア』として生まれて来ていたら、
誰も不幸にならなかったのかな・・って」

私はその言葉に目を見開く

「母さんだってあんな風にジュエルシードを集めることなんて考えなくて、
なのはのことも傷つけたりすることもなくて、母さんとアリシアは穏やかに
毎日を過ごせて、誰も悲しむこともなくてそれで」
「フェイトちゃん!」

あまりの事に驚いて大きな声を上げてしまった
だけどそんなことを気にする余裕もなく、体を起こして正面から睨み付ける

「フェイトちゃん、それ以上言うと怒るよ?!」
「なのは、ヴィヴィオが起きちゃうよ」

そう言って、人差し指を唇に押し当てられる
それにすら苛立ってその手をどけた

「フェイトちゃん、フェイトちゃんと出会えた事でどれだけの人が幸せになれたと
思っているの?フェイトちゃんが言ってるのはそういう人達のこと全部無視した考えだよ?
どうしてそんな事言うの?」

完全に頭に血がのぼっていた
あまりにも酷い『もしも』の話

「フェイトちゃんは幸せじゃないの?皆と一緒にいて、私達と一緒にいて、
幸せじゃないの?自分なんかいなかった方がよかったと思ってるの?
なんでそんな悲しい事言うの?」

抱き寄せられる

「なのは。落ち着いて。そんな泣きそうな顔しないで」

私はその抱き寄せられた腕の中で唇を噛む

「そんなこと言うフェイトちゃんなんて嫌い」
「うん」
「フェイトちゃんに会えたことで私がどんなに救われてるか分かってない」
「うん」

ぎゅっとその胸元を握る

「私達の事、愛してるって言ったのは嘘だったの?」

フェイトちゃんの首に私は顔を埋める

「嘘じゃないよ。愛してるよ」

耳に響く静かな声

「じゃあ、二度とそんな事言わなって、考えないって約束して」
「ごめん」

手の甲で頬に触れられる、そこに嵌められている指輪が冷たい
私の左手もそれに重ねる


「私もフェイトちゃんのこと」



フェイト チャン ノ コト



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渡さない


プレシア・テスタロッサにも


アリシアにも


フェイトちゃんは渡さない


絶対に渡さない




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