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EDENⅡ-10-



EDENⅡ-10-



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EDENⅡ-10-

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何処までも続く薄暗い廊下
コツコツと自分の足音だけが響く

横には無数のドアが並んでいて、その小さな小窓からは
ギョロリとしたの両目が一つ一つの窓から覗いている
中には私がドアの前を通ると、奇声を発する者もいた

もしかしたらこの中には私が関わった人間もいるのかもしれない

ここにいる人達のその後なんてあまり深く考えたこともなかった


だけど今はそんなことはどうでもいい


『ではまず、貴方のお名前は?』
『アリシア。アリシア・テスタロッサ』

ガラスの中のそのやり取りを、この目で見ていても信じられなかった
フェイトちゃんの姿をした違う人格
フェイトちゃんの姿で別の名前を言い続ける

アリシア・テスタロッサ

それはフェイトちゃんが生まれて来るきっかけになった
幼くして亡くなってしまった少女

『年は何歳ですか?』
『5才』
『何処に住んでいますか?』
『母さんが働いている所』

怯えたように答えていく
それは私の知っているその人とは違って
酷く混乱する

アリシアという少女を私は詳しくは知らない

アリシアがどんな子だったのか、どんな風にフェイトちゃんと違うのか


私は全然分からない


『家族はいますか?』


ただ、私は


『母さんとリニス』


もとのフェイトちゃんに戻って欲しいだけ
フェイトちゃんを取り戻したいだけ
今は事故の所為で少しだけ何かがおかしくなってるんだ

すぐに元に戻る

フェイトちゃんはすぐに戻ってくる


こんなのは何かの間違えだ


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その部屋は廊下の先の一番奥にあった
他の部屋と違い、鉄格子で閉じられただけの部屋の中は丸見えになっている
それでも他の部屋と比べると随分と待遇が良いように思える

最も重い罪を犯した人物が入る独房
ここからは半永久的に出る事が出来ない

中の人物は書物を読み耽っていた
その姿はあの頃となんら変わることが無く

もう思い出す事も今ではなかったのに
二度と顔を見ることは無いと思っていたのに

唇を噛む


娘を苦しめ、大事な人を傷つけた人物


黒い感情が湧き上がって来る


ふっ、と顔が上がり立っている私と目が合う


「おや、これはまた懐かしい顔だ」


ジェイル・スカリエッティ


7年前のJS事件の主犯

そしてここは


軌道拘置所


「わざわざこんな所にまで。面会にでも来てくれたのですか」

その言葉に背筋が冷たくなり、顔を背けたくなる

「随分と暇を持て余していたんですよ。何せ誰との面会も許されていませんからね。
まぁ、面会に来てくれるような奇特な人間もいませんが」

よく喋る男だ。と思う。そんな所も昔のままだと認識する
つまり中身もなんら変わりは無いということ
更正の欠片も見られない

それが久しぶりに目にしたスカリエッティの印象

「聞きたいことがあります」

色々な一切の感情を隅に置きざりにする
今の頼みの綱は残念ながらこの目の前の人物しか浮かばない


「プロジェクト『F』について聞きたいことがあります」


相手は片方の目を細めた

「ほぉ。それは中々興味深い。だが今更何故?」
「質問をしているのは私です」

スカリエッティはギシリと音をたてて椅子の背もたれに体重を預けた

「世間話位させて下さいよ。久し振りにココの人間以外と話すんですよ?
まぁ、いいのですがね。で、貴方はどこまで『F』についてご存知なんですか」

私はそこに置かれた椅子に座りもせずに答える

「禁じられている行為」

私の言葉に額に手を置き笑いながら天井に顔を向ける

「流石にそれだけじゃない筈ですよ。もっと知っているでしょう?
何せ一番身近に実験体がいるのですから。あの方に聞くのが一番手っ取り早い
でしょうに。それとも今は近くにはいないんですか?殉職ですか?」


『あの方』


その頭の中の想像にすら出して欲しくは無い

「余計なことは喋らないで」

力を入れすぎて拳が真っ白になる

冷静になれと理性が警告する、
逆上しろと本能が命令する

「まぁ、今の私にはそんな事さして興味もない。それにしても『F』とはまた
懐かしい響きだ。私はどちらかというと戦闘機人の方に力を注いでいましたから、
最後の方は『F』にはあまり関わってないのですよ」

戦闘機人

ナンバーズと呼ばれていた子達
あの子達の半数はあの後更正して局員として働いている

「所詮『F』は媒体のコピーにすぎませんからね。しかも完全体では無い。
そのものの器の姿形だけを似せることしか出来ませんから。
中身だけは誰がどう実験しても移すことは出来なかった。
例え脳に直接記憶を移植しても。だからあのプロジェクトは失敗で」
「失敗なんかじゃない!」

我慢出来なくて大声を張り上げた

「おや、怒らせてしまいましたか。すみません。なにせ人とまともに話すのは
久しぶりなもので。コミュニケーションの取り方なんてすっかり忘れてしまってまして」
「コミニュケーションを取りに来たんじゃありません。質問にだけ答えて下さい」

スカリエッティは片手をあげる
それを了承の合図と取る

私は静かに息を吸う。冷静を保つ

「記憶が・・・、媒体となった人間の記憶が、ある日突然現れるという事はありますか?」

相手は眉を潜める

「言っている事がよく分かりませんが」

目を閉じる


『私はフェイトなんかじゃない!!私はアリシアだよ!お家に帰して!!』


「プロジェクト『F』で生まれたとある人物が、ちょっとしたきっかけで
媒体となった人間の記憶が今までの人格と入れ替わって現れました。
聞きたいのはその今までの人格を取り戻せるかどうか」

ガシャリと大きな音が響いた

驚いて目を開けると、目の前に鉄格子を鷲掴みにしたスカリエティの顔が
すぐ間近にあった

あまりのその異様な眼光に思わず後ずさる

「媒体の記憶が蘇えっただと?!」

何故か異様に興奮している

「そうです。なので元に戻す方法を」
「元に戻す?!何を馬鹿なことを!!これは今までの歴史を塗り替える程の
出来事なんだ!!元に戻すなんてそんな馬鹿な!!そんなことが出来るか!!」

今にもその握っている鉄格子を壊しかねない勢いで続ける

「それはプロジェクト『F』の完成を意味するんだ!!
今まで誰も成しえることが出来なかったのに!!どんな高名な魔導科学者で
も無理だと言われていたのに!!」

段々と自分の心の中に落胆の色が濃くなってくる
ここに来たのは間違いだった

「どんな人間だってコピー出来る!!その魔力から才能から全てだ!!
しかも何人でも造ることが出来る!!」


ただ、目の前の男が恐いと思った


そしてこれ以上話すことは無駄なんだと悟る

「今すぐその実験体を私に預けてくれ!!絶対に『F』を完全なるものにしてみせる!!
私にはその力がある!!」

喚き続ける相手に背を向ける

「待て!行くな!世界を今度こそ変える事が出来る!絶対にだ!素晴らしいだろう!」


狂ってる


まるで話にならない
ここに来たのは失敗だった
今、本当に最低な気分だ

別の方法を考えないと


「高町なのは!!」


自分の名前を呼ばれ立ち止まる
名前を覚えられていたのかと気分が悪くなる


「貴方はもう一度私の元を訪れますよ。必ず」
「さよなら」


私は薄暗い廊下を歩き出す


世界を変える?


私はそんなことは望んでいない


ただ


あの日々を


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あの人を返してと


誰に向かって叫べばいいのですか?







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