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Prayer-15-

終ワリ





始マリ




終ワリ





始マリ




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お昼前の授業は具合が悪いからとエスケープした。

お昼を二人で取ろうとは言ったものの、
場所は指定してはいなかった。自分でも考えてはいなかった。

ただ、ここに来てくれたら良いなと
そんな思いで向かうのは

出会った。その場所。
昨日の夢と同じその場所。


まだ花達が咲き誇るまでは先のこと。
今は春を待ち、静かに眠っている。
そんな風に考えながらそこに行き着く。途端。


ザッと一瞬風が凪ぐ。


凪いだ風で乱れた髪が自身の視界を遮る。


はらりと乱れた髪がもとの位置へと戻る。
視界の先には待人。


「あぁ、遅れて堪忍な。ずっと待っといてくれたん?」


その表情。それは不安そうにもすまなそうにも見えた。
ウチは苦笑いを返す。


「そんな顔せんと、笑っておくれやす。」


無理な願いだとは思ってはいるがそう言わずにはいられない。


「せやね。やっぱり苦しみも痛みも消えてはくれへん。」


きっとこれからもそれは消えはしない。
一生抱えて生きていかなければならない。

それは昨日と少しも変わらない気持ち。


対峙するその人は、今度は深い悲しみを湛える。


「せやけど」


自分を赦していると言ってくれた人。
自分の気持ちを軽く温かくしてくれた二人。


自分の全てを受け入れると言って、
命まで投げ出そうとしてくれた人。



頭の中に浮かぶのは、その人達。
温かくて、優しい人達。


「皆、ウチのこと心配してくれはった。
 ウチの為に泣いてくれはった。信じられへんかった。
 殺されても仕方ない位憎まれてる。そぉずっと思ぉてた。
 自分でそう言い聞かせてたのかもしれへん。」


犯してしまった罪は消えない。
とてもとても償いきれるものでは無い。けれど。

込み上げて来るのは温度。感情。そして取り戻した



『ココロ』

 

「又、我侭言わせてもろてええやろか?」


相手からの承諾も得ずに音を出す。



「例えこの苦しみに一生涯苛まれたとしても、
 例えこの想いが永遠に成就することが無いとしても。」


未来に『救い』が無いとしても。



「今は、生きたい。」



『逝きたい』と祈った。

今は

『生きたい』と祈る。



自分は決して出会ってから、何時(なんどき)も苦しくはなかった。
愛する人と共に歩んだ日々は切なかったり傷つきもしたけれど


楽しかった。


あんな風に想いを知られてしまったけれど。


二人で笑い合って。その刹那は



確かに、



幸せだった。




少し距離を置き立ち目の前にいるのは


昨日の夢の中と同じ



自分。



だけど今ならわかる。


藤乃静留の姿をしているが、
藤乃静留では無い。



それは自分自身で作り上げた偶像ではない。



あの時、一番地の残骸で確かに呼んだ。



「神様は赦してくれるやろか?」



そう言ってからくすりと笑う。


「それは流石にあんたかてわからへんな。」


今度は少し困ったように首を傾げた。
その表情が、切なそうにも嬉しそうにも見えた。



「最後まで心配かけて堪忍な。」



愛しい愛しい自分の分身。




「清姫。」




見開かれる朱色の瞳。



「ウチが気付かへんと思ぉとったん?清姫もまだまだ甘いどすな。」



祭りはもう二度と行われることはない。
だからもうこの世界には現れないであろうその存在。

三百年毎に戦友を守り戦ってきた。
どれ程苦痛であろうと。どれ程痛んだであろうと。

ただ一人の為に戦って。


「ウチはきっと、今までの清姫の主の中では劣等生なんやろね。
 ほんとならもう眠りについとる筈やのに。堪忍な。こないなまで心配かけて。
 堪忍な。ウチがあんたにとって最後のHimeで。」


その言葉に心外だとばかりにふるふると頭を振る。


「疲れたやろ。ウチはもう大丈夫やから、ゆっくり休みぃ?」



音も無く口元だけが動く。



「おおきに。ウチもや。ウチも幸せやったよ。」



 
そして綺麗に笑う。


その姿に


いつの間にか泣いていた。


近づき両手を伸ばし。抱こうとする。


でもそれは空気を抱いているのと同じ様で
幻と同じように、実体は無い。
それでも廻した腕は解かない。


腕の中で粒子の様に、ゆっくりと消えてゆく自分の姿をした



「清姫」



呼び止めたかった。
ともすれば弱っている自分の側にいてくれと懇願しそうになる。



でも



戻ったココロが勝手に紡ぐ。



「清姫。はばかりさんどした。」




それに満足した。
それに安心した。



消え入るその表情も泣いて笑っていた。



「ゆっくり休みよし。」



その時鐘が大きく鳴る。



完全に消え入るその時、
その口元が動く。



ただ一つ、微笑みを返し



「おおきに。」


同じ言葉を送る。




天へと光の粒が登ってゆく。



光を追って見上げた空は



蒼かった。





この格好は彼女の顔に影を映すだろう。
この手の中にある二人分の昼食を見せたら笑ってくれるだろうか。


それでも


なつきが来る。
なつきに会える。


それだけでも嬉しい。自然に表情が緩む。






今、生きていることが幸せだった。






- END -




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