FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Prayer-14-

何処へでも、会いにいくよ。


昼休み前までの授業には出なかった。


朝、教室に入る途中廊下で舞衣が心配そうに声を掛けてきた。
昨日あんな風に寮を飛び出したが気掛かりだったようだ。

私は大丈夫だと短く告げ、自分の教室へと向かう。
何故かいつもより賑やかに思える教室。
ざわざわと数人の女子が集まって何やら熱心に話しこんでいた。
関係無いとばかりに席に着き、机に肘をついて窓の外を見た。
その時、その集団の中から一人の名が告げられる。


途端意識がそこに注がれる。


『あぁ、早く見たい!今からでも見てこようかな・・』
『駄目よ、もう教室の前には人だかりが出来てるって言ってたよ。』
『今までインナーに私服を着てたこと無いよね。』
『私見たよぉ~、黒のタートルネックで凄く大人な感じで素敵だったよ!
 何着ても着こなしちゃう静留様って素敵。』
『やっぱり!!ねぇねぇ次の休み時間一緒に見に行こうよ~。』


どうやら静留がちゃんと登校しているという安堵と共に、
いくつかの疑問が頭を飛び交う。


インナーに私服?

自分の様に?


そんな些細な事でもあいつならこの位騒がれて当然だとは思うが。
あの、身なりには誰よりも厳しい静留が何で・・・


そこまで考えて一瞬にして自分の体温が落ちるのが解った。



きっと、その首には私が付けたであろう『刻印』が残っている。



グラリと視界が歪んだ。


これ以上この教室でそんな話しを聞いていることが
苦痛で、早足で教室を抜け出した。



屋上の手すりに手を掛け想いを馳せる。
あともう少ししたら授業を終わる鐘が響くだろう。


あれは春だった。
桜が咲いていた。
植えられた花々が視界一杯に広がっていた。

それを見た時、


自分以外の全ては幸せなのだと。
自分以外の全ては綺麗なのだと。


だから無意識にそれをむしり取ってやろうとした。
今考えてみるとほんとうに子供じみた、ただの八つ当たりにすぎないが。


そして出会った。


花達も一生懸命に短い命を生きている。だから、
それを手折る権利なんてないのだと。

誰かにそんな自分を見られた羞恥心と半ば自分勝手な怒りを
誤魔化す為に睨み付けた。


相手はそんな私に動じることなく、最後まで笑みを絶やすことはなかった。



そして私達の時間はカチリと音を立て、動き出した。



もしも、自分がHiMEでは無かったら、
出会うことも無かったのだろうか?

もしも、あの花園で出会わないければ、
静留は私のことで狂うことも無かったのだろうか?


二人が出会わなければ、


そうしたらお互い幸せになれていたのだろうか?



もしも。もしも。もしも。



「なつき。」


ハッとして振り向くとそこには今朝と同じ様に心配そうな表情を浮かべる友人。


「舞衣。」
「探したんだよ?」

そう言うと、私の隣へと自然に並ぶ。

「授業はいいのか?」
「あんたに言われたかないわよ。なんだか授業中も騒がしいしね。」

どうして騒がしいのかはあえて言わない。

昨日の私が静留を探していたのを知っている舞衣。
暗に私か絡んでいるであろうと、おぼろげにでも思っているのであろう。
口が勝手に開いた。

「あれは私の所為だ。」
「私の所為って・・・どうゆうこと?」

言うか言わないか迷う。
でも、この重い気持ちを自分一人だけで留めておくことが出来なくて

「昨日静留の首を絞めた。その時の多分痣がきっと残っている。」

吐露した。曇るその顔を見るのが辛くて目を背けた。

「首を絞めたって・・?なつきあんた・・」


嫌われるかもしれない。
折角出来た友達なのに。


そう、舞衣は友達。
静留とは違う感覚だが、自分にとって大切だというのは解る。

この頃、失いたくないものが増えた。


「そうだ私は静留を殺そうとした。」


静留が苦しそうだったから。

静留が悲しそうだったから。

静留が辛そうだったから。


勿論それは自分への言い訳。


本当の理由。それは



静留が



私を



置イテ イナクナロウ ト シタカラ 



ズキリと痛んだ胸の辺りを握る。


「そっか。」


温かい手が私の頭を撫でた。


「そっかって、それだけか?!」

拍子抜けした。絶対怖がられると、引かれると思っていたから。
背けていた顔を舞衣に向ける。

「だって二人とも生きてるし、いつかは何かあるかもしれないと
 思ってたし。起こるべくして起こったことじゃない?」

しれっとそんなことを言う舞衣に私は肩の力が抜ける。

「こうなると予想していたのか?」
「う~ん。こうなるとっていうかぁ・・。でもあたし会長さんの気持ち
 もなつきの気持ちも解るっていうかぁ・・・。」

いつになく歯切れの悪い言い方をする。

「私と静留の気持ちがどうして舞衣には解るんだ?」
「だって、あたしだってアリッサちゃんのチャイルド倒しちゃったし、
 その所為で深優さんにも悲しい思いさせちゃったし、
 命のこと半分誤解して本気で攻撃しちゃったし。」
「あっ」

あまりにも色々なことがありすぎて忘れていたが
舞衣は最後まで残ったHimeだ。


「それに、巧海が消えるとこも裕一が消えるとこも見たわけだし・・・ね。」


柵に背をあずけ私に向かい苦笑いを向ける。


他人を壊し、大切な人を傷つけ、最愛の人に裏切られ失くし。


それは確かに私と静留は経験した。

もしかしたら舞衣の方が悲しいのでは無いのか?苦しいのでは無いのか?


でも!


私は柵から体を離し舞衣の正面に向かいその肩に両手をかける。

「でも!あれは仕方が無かった!あの時は誰もがそんなことを考えている
 余裕なんてなかった!誰が悪いわけでは無い!」

そう、強いて言えば悪いのは黒曜だ。決して私達では無い。
どうしてそれがお前も静留も解らない?!

「そうだね。誰が悪いとかそんなんじゃないんだよね。」
「なら、なんでそんな顔をするんだ?」

同じ表情を昨日も見た。

「もう、終ったことじゃないのか?皆、いなくならなかった。
 アリッサだって、深優だって、楯だって、命だって生きているじゃないか?!
 ちゃんと今まで通りに。」


なのにどうしてお前達はそんな顔をする。


「あの時の気持ちを全部忘れることが出来ないから・・・かな?」
「それは過去だろ?なら、『今』はどうなんだ?今も苦しいのか?悲しいのか?」


私がもし誰かのチャイルドを滅ぼし、そのHimeが壊れた姿を見たら、
静留のように、舞衣のように狂っていただろうか?

私がもし誰かの手で、目の前で静留を失っていたら、
静留の気持ちも、舞衣の気持ちも解ってやれたのだろうか?


又、『もし』だ。


苛々して、舌打ちする。


「私はそんなにもう苦しくはないよ。」


その両手にかけていた私の手がそっと払われる。
代わりに握られる。


「なつきがさっき言った通り皆生きてるから。
 私は何も失っていないし。だからあの時の悲しい気持ちも、
 いつかは癒されると思う。だけど会長さんは・・」

そこで舞衣は少し困ったような迷っているように躊躇した。
きっとその後の言葉に私の知らない答えがあるような気がして、
懇願にも似た気持ちで


「言ってくれ。」


そう告げた。


解ったと。信用していると。


舞衣は一つ頷く。


「会長さんが祭りの間何をしたか、なつきと何があったか
 なんて深くは知らないんだけど。」


舞衣。


静留は、私のことを愛していて、私が憎んでいた何もかもを
私の代わりに破壊したんだ。
私はそれを止める為に戦って、共に倒れたんだ。

静留の大切な人が私で。私の大切な人が静留だったから。


ただそこには想いの違いがあったけど。


全部教えたら舞衣は何て言うのかな。


そんなことを思った。


「だけど会長さんを見てたら、あたしみたいに全部が元通りなんてことは無い
 んじゃないかって。そんな気がする。」


そう。あいつのやってのけたこと全ては元通りにはならない。
元に戻ったのは『アンチマテリアルライザー』の対象になった『者』
とHimeの大切な人だけ。


踏みにじった、たくさんのココロ。
例え生き返ったとしても向けられるであろう憎悪。


そして戻らない


命。


全て、私。一人の為に。
その手を酷く拒絶したのにも関わらず。



私はよろよろと数歩下がる。


やっぱり昨日、この手で楽にしてやればよかった。
否、今からでも遅くは無い。


解き、放してやりたい。


全ての苦痛から。


私は自分の両手に視線を落とす。


今度こそ共に。
せめてもの私の償いに。


「なつき!!」


その時、強くこの両手が握られる。
ぎりぎりと。


「っ!」


ハッとして顔を上げると、その姿が一瞬、炎に包まれているのかと錯覚する。


「会長さんの全ては元には戻らないけど」


母さんを失って、一人で生きていこうとした。

復讐を糧に戦おうと決めた。


一人。それが強さだと思っていた。


そんな時に


出逢った。


そして一人では無くなった。

 

「会長さんは、なつきは失くしてないでしょ?」


こうして舞衣にも出会い。


「なつき、なつきはどうしたいの?」


だから私は弱くなってしまったのだろうか? 


もし今の自分が過去をどちらかを選択できるのだとしたら、
どちらを選ぶ?


ゲーム好きな自分の頭の中に浮かぶ選択肢。


『その人に出会わないで自分自身で幸せを探す?』
『その人と出会って痛みを互いに伴いながら幸せを模索する?』


そんな面倒臭い選択肢の出るゲームなど、きっと誰も買わないだろうと苦笑する。



その時大きく鐘の音が響く。


「私は」



待っている。


一番大切な人が。



「私は、大切な人達が笑っていて欲しい。」


鐘の音で掻き消されたかとも思ったが舞衣は笑う。
  

「その筆頭が会長さんでしょ?」


舞衣は笑った。
私も笑った。


私は生きている。


「じゃあな。舞衣。ありがとう。」



そして



静留も生きている。



走る。走る。走る。


待ち合わせの場所は特定されてはいなかったが、
足が自然とその場所へと動く。



近くになると、息を整える為にゆっくりと歩く。


もう一度自分に問う。



もし今の自分が過去をどちらかを選択できるのだとしたら、
どちらを選ぶ?


出会う?
出会わない?



「もう一度過去をやり直すのか?そんな面倒なことはご免だな。」


だから一つ笑い、その場所への角を曲がる。


私の姿を見たら、笑って欲しい。


それだけできっと、


私は幸せになれる。


スポンサーサイト
コメント
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。