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Prayer-12-


『藤乃静留』



聞き慣れたアラーム音が鳴る。

鈍く働く思考の中、それを止めようと手を伸ばす。
でも、いつまでも鳴り止まない音。

もぞもぞと範囲を広くし、腕を伸ばそうとする。


何にも触らない指先に業を煮やし上半身だけを起こす。


閉じられたカーテンの隙間からの光。


なんだかいつもとは違う起きぬけの感触。
手触りで、自分が寝ていたのがソファだと分かる。
掛けられた毛布。


まだ何処かで鳴り続けている目覚まし時計。
ぐるりと部屋の中を一周見渡す。



「し・・・・ずる?」



ほとんど無意識にその名を呼んだ。



「静留?」


もう一度呼ぶ。

声だけが宙を舞う。



瞬間飛び起きる。


体から血の気が引いた。


「静留!!」


ドクリと心臓が鳴る。


意識を手離す手前のことを思い出そうと必死で思いを巡らす。


思い出せ。思い出せ。思い出せ。


細い首に手を伸ばし
少しずつ力を込めた


それから?


それから?


焦る気持ちだけが先走り、それ以上何も思い浮かんではこない。


嫌な汗が体に滲む。





その時、突然別の電子音がすぐ側で鳴る。


今だ何処にあるのか解らず鳴り続ける目覚まし時計とは逆に、
自分の寝ていた頭のすぐ横で鳴る携帯。

そこに浮かぶ液晶の文字は


『藤乃静留』


半ば呆然と数秒その文字を眺めてから、
最速で手に取りボタンを押す。


『なつき、ちゃんと起きれたん?』


耳に流れてくるその懐かしい柔らかな声音に錯覚する。納得する。

これは夢だと。
私は夢の中にいる。


『なつき?』


膨大な想いが押し寄せる。
たくさん。たくさん。言いたいことがあるんだ。
夢ならば次の瞬間目の前に現れてもいいだろう?

そう願いを込めて。


「静留。おまえに会いたい。」


次には静留が姿が目の前に現れる筈だった。
しかし予想に反して返ってきたのは
『はぁ~』と、耳元に届く溜息。


『もしかしたらと思って電話して正解やったね。なつき、
 目の前のテーブルにあるメモ、読んでないやろ。』


メモ?


視線をづらすと確かにある一切れの紙切れ。
慌ててそれを手に取る。


(なつき。今日は久しぶりに一緒にお昼取ろな。)


綺麗な、見慣れた字だ。


『まだ、寝ぼけてるん?目覚ましはんは、そのテーブルの下に
 置いてあるから、なつき。早よう支度せんと1現目に間に合わんさかい
 急ぎよし?』


「うん。」


それしか言えなかった。


『ほな、後でな。二度寝したらあかんぇ?』

もう一度同じ返事をした。

そしてプッと先に切られる。


その声音の余韻に少し浸り、テーブルの下の目覚ましに手を伸ばした。




 

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