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Prayer-2-


『共に祈りましょう』





その罪はただ一つ。


たった一人を愛したこと。




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教会の月明かりの下であいつの姿を見た時、酷く寒気がした。
俗に言う『幽霊』を見たのかと思った。
月明かりの下だったから尚更なのかもしれない。


その影が、あまりにも薄くて。


でもすぐにそれが誰なのかがわかって寒気が悪寒に変わった。
この世で一番憎んでも憎みきれない相手。

「こんな時間にここに何の用よ?つーか、ある意味不法侵入なんだけど?」

他人の何もかもを無視し、自分の我の為だけに行動して、
たくさんのモノを破壊した女。

『おばんどす。結城はん。結城はんこそこんな遅くまで
 えろう熱心に勉強してはるんやね。』

なのに

いけしゃあしゃあとそいつはいつもの気色悪い微笑を私に向けた。

その顔を見た時は殺意さえ湧いた。
この世界に戻ったことを良いことにこの女は、


『堪忍な。』


阿保みたいな謝罪で自分がしてきたこと全てを無かったことにした。

「私はただ忘れたものを取りに来ただけだつーの。そしたらそこに
 招かざる罪人がいたってわけ。」

たっぷりと嫌味を込めた言葉にも微動だにした様子もなく、
柔らかな笑みを絶やさないこの女に更に憎悪が増す。

「あんたはあの時にやってのけた行いを懺悔しに来たの?
 それともこの後に及んで自分の恋愛祈願でも?」
 
私は多分後者だろうと検討をつける。この女ならありえる。
この後に及んでそんなくだらない理由でこの場にいる人間が
何故生き返ったのかがわからない。これも神の慈悲なのだろか?


でも私は許さない。誰が赦そうとも私は絶対赦さない。


HiMEの力が無くなってしまった今なら、あの首に手をかけて、
罵詈雑言を浴びせてやることが出来る。どんなに酷い仕打ちを
他者にしたのか、心底わからせてやりたかった。

近づく距離、私は身構える。

だけど、至近距離でまじまじと見るその表情に、もう一度激しく寒気がして、
私は動くことが出来なかった。

まるで能面のような微笑。ほとんど白に近い顔色。
何も写してはいないその朱をおびた両眼。

それは本当に死人のようで。
私の中の何もかもが無になる。


『結城はんも忘れもん見つけたら、早く帰宅せなあきまへんえ?
 夜には何が出るかわかりまへんやさかいに・・』


そう言って流れるように私の横を一歩踏み出した時、
思わず口に出してしまう。

「あんた」

ともすれば震えそうになる。

「あんた、生き返ったのに死んでんだね。」

一瞬立ち止まったそいつは、

『結城はんはウチにいなくなったままででいてほしかったんちゃいます?』

予想だにしなかった答えに私は、間の抜けた声しか出せなかった。

『ほな、さいなら。』

しばらく呆然として、急いでその姿を追おうと振り返る。
一房の茶色がかった髪が、闇に消えていくのが視界に入った。

全身が凍ったように動くことが出来ない。
追いかけてその肩を掴むことも出来ない。

暫く呆然と出て行った闇を見入りながら思う。



ああ



たぶんあの女は、自分の罪の重さを知っている。

一度壊れて身を滅ぼし、壊れたまま再生した。
不良品のまま今は生きている。


今は、生かされてる。


罪に対する、罰のように。
きっと空から十字架が降ってきて、その心臓を貫かれた方がまだ幸せなのかもしれない。


それ位に酷く、残忍な行いを、『藤乃静留』はやってのけた。

「自業自得じゃん?馬鹿じゃないの?今更こんな所で何してんのよ?!」

ここでいい気味だと思えたなら、私の気持ちも少しは軽くなれたのに。



鮮明に見える左目に手を添える。浮かぶ映像。


笑顔を向けるママ。泣きながら抱きつく私。
大切な人を失わなかった私。


『全て』を失った藤乃。


自分がその立場に立たされたらと想像する。
祈っても消えない罪の重さに眩暈がした。


藤乃は、本当にこの世からいなくなった方が良い人間なのだろうか?
何よりもその方が藤乃にとっても良いことなのだろうか?


「何を馬鹿なことを・・」

その一人言は自分に対してかあいつに対してかは解らない。


月明かりが差し込むその真下で、私は跪いて両手を組んだ。


もう憎しみも、憎悪も感じない。



ただ


悲しかった。



その願いが何か、気付いてしまったから。



神様お願いします。



何故かは知らないけど祈っていた。
何故かは知らないけど左目からだけ涙が出た。


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